私は父に言われるまで受験なんてものを知らなかった。五年生の終わりまでただの『勉強』をしていた。塾なんて通ったことがなかったから自分がトップだと思いこんでいた。今思えば恥ずかしいけど。
ところで話は変わるが、私は「漫画家」になりたいと思っている。馬鹿馬鹿しい、なれるわけないじゃんと思われるかもしれないが、そのきっかけは海賊漫画「ONE PIECE」だった。ONE PIECEからは大事なことを学んだ気がする。
主人公のルフィは自分が海賊王になると思っていたが、途中シャボンディ諸島で仲間を一人も守ることができなかった事や、頂上戦争で自分より上の者たちにやられてしまった事をきっかけに折れてしまい、大切な人を守れなかった事で落ち込む場面があった。私はその場面に自分を重ねた。今までライバルがいなかったから、つまりルフィでいう弱い敵や同じくらいの強さの敵としか戦ってこなかったから上が見えていなかった。きっと自分がトップだと。
でも、塾に通ってみると現実は違った。テストで思うような点数は取れないし、すごくかしこい人が塾にはたくさんいた。順位だって、前にはたくさんのトップがいる。現実を目の当たりにして、私は何度も折れた。何度も落ち込んだ。泣いたりもした。でも自分の気持ちを分かってくれる人なんてそうそういなかった。みんなからの期待によるプレッシャーもとても重いものだった。
でもルフィが何度も何度も立ち上がる姿を思い返して、自分が変わらなきゃと思った。それから自分で勉強の方法を変えたり、やるべき事の取捨選択などの試行錯誤を重ねた。自分は自分で変えなきゃならないと思ったからだ。
ドラマ「ドラゴン桜」でもライバルを作ることは大事だと言っていた。だから上を見た。そしてライバルをつくった(勝手に)。でも上を見れば見るほど、自分の結果にどうしても絶望して悲しくて泣いた事もあった。それでも踏ん張って結果が出た時はうれしい。それで調子にのるとまた落ち、の繰り返しだった。
ある日、父がこんなことを聞いてきた。
「何をそんなに不安になっているのか」
と。何も分かっていないなと思ったが、
「えっ……? だって落ちたら今までの頑張りが無駄になるじゃん」
と答えると、父はこう返してきた。
「中学受験は大学受験の練習よ、無駄にはならん」
それを聞き私は思った。大学受験の練習の練習にくよくよしていてはダメだと。ちょうどその時、ONE PIECEのとある場面で落ち込んでいるルフィに対し、シャンクスが思った言葉を思い出した。
泣いたっていいんだ……!! 乗り越えろ。
そうか。泣いていいんだ。そう思うと気が楽になった。それから思い通りにならない結果にうなされ、何度泣いたかも覚えていない。でも、つらくてもそれを引きずらず前を向けた。これが受験勝負の決め手の一つだと私は考えている。
本番の時、なぜか私は緊張しなかった。自分を信じて今までの経験をふり返り、解いた。すべての力かどうか分からなかったが、結果は無事合格だった。これから私は大学受験に向けて行くんだなと思う。
とある漫画の名言に支えられた、共感できたというようないろんな人達の支えになれるような漫画を私はいつか描いてみたいなと思っている。この「中学受験」という経験を通してこそ、得られた様々なものを忘れずにこれからも過ごしていきたい。