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2023年度の作品

No.8 『 波乱万丈”マルチタスク中学受験” 』
                県立広島中・修道中・近大附属中/Iくん

 僕はゲームを作るのが好きだ。ゲーム制作の部活動がある中学校に進学したいという一心で中学受験の扉を開けた。それは、小学三年生の二月の事だった。

 入塾後は普通に通塾していた。しかし、小学四年直前に事故が起こった。春休みの時、鬼ごっこで逃げている途中で転んで溝に落ちてしまったのだ。その時右手を強打し、利き手である右手の骨を折ってしまった。それだけに収まらず、四年生のうちに三回骨折してしまった。そのせいで四年生の時の成績は伸び悩んだ。

 小学五年生の時には、骨折も完治し、成績も安定してきた。この頃には塾で初めての友達が出来て、塾に通うのが楽しくなってきていた。そこから成績は多少上下したが、平均以上の成績を保つことはできていた。

 そして、小学六年生になった時。習い事の講師からある誘いがあった。
「最近インターネットでプログラミングの全国大会というものを見つけたんだ。良かったら出てみない。」

 正直とても出たかった。でもどうしても勉強の妨げになってしまう。すごく迷った。その事を習い事帰りに母に伝えた。すると母は落ち着いた穏やかな様子でこう答えた。

 「今年で小学校生活も最後でしょ? だったらそういう経験を増やした方が良いと思うよ。無理にやれとは言わないけど、やりたいと思った事はやった方が得だよ。」
この言葉で、僕の迷いは吹っ切れた。大会と受験のマルチタスクを絶対に成し遂げる、そう心に誓った。

 しかし、いざやるとなると、プログラミングと受験勉強の両立は厳しかった。どちらも中途半端になりそうで怖かった。勉強は予習と復習、完全チェックを二、三ページは出来ていたのだが、プログラミングの進みが遅れていた。だから、期限の近いプログラミングに全力投球するようになった。予習、復習等最低限の勉強を終わらせるとすぐにプログラミングに取りかかった。時には集中しすぎて夜中二時頃までしている日もあった。その甲斐あってか、無事に期限までにプログラムは完成させる事が出来た。

 いよいよ大会の日。その日は不思議と緊張しなかった。大会でのプレゼンも財をなし、その大会の二位の位置づけである広島工業大学賞を受賞した。見事、この大会は成功裏に終わったのである。

 そこから勉強がメインになった。予習と復習、完全チェックも四、五ページするようになった。それからズタズタだった成績も段々と上がっていき、六年生後半には男子総合五十位以内に入れるほどには安定した。特に理科、社会の完全チェックには力を入れた。何度も繰り返し取り組んで脳裏に焼き付けた。そのおかげで理科、社会はかなり自信がつき、得意科目になりつつあった。

 受験前の最後の模擬試験の日。どれほど自分が成長したか見てみたかった。結果は今までの模擬試験の中でも良い方に転んだ。勉強の成果がはっきりと表れて嬉しかった。

 一月二十八日。第一志望の県立広島中学校の受検日だ。持ち物を確認し、扉を開ける。不思議と緊張しなかった。一歩一歩足を運び、中学校前まで来た。軽く深呼吸をする。不安は一つもなかった。だって、あの日心に誓ったじゃないか。

『大会と受験のマルチタスクを絶対に成し遂げる』と。

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